愛車から流れる音楽

昔の我が家の車内BGMといえば、クラシックが定番だった。

というのも、私と妻は大学のオーケストラの楽団で知り合った。卒業してからも市民オーケストラに所属し、毎週練習に通っていた。

その頃の車内では、練習している曲や、オーケストラの練習を録音したものを流していた。

車に乗っている時間も、音楽の勉強。

「あそこの音程が……」
「この部分、もう少しこうしたいね」

なんて会話をしていたかどうかはさておき、少なくとも車内はクラシック音楽に包まれていた。

優雅である。

知的である。

なんだか、ちゃんとした音楽一家っぽい。

ところが、時は流れた。

最近のドライブミュージック(youtube)のミックスリストを、ご紹介します。

  • YOASOBI「アイドル」
  • Ado「うっせぇわ」
  • 映画『ウィキッド』より「Defying Gravity」
  • CANDY TUNE「倍倍FIGHT!」
  • Ado「唱」
  • 映画『モアナと伝説の海』より「俺のおかげさ」


どうだろう。

アイドル、反抗、ミュージカル、アイドル、踊れる曲。

ジャンルという概念が崩壊している。

クラシックはどこへ行った。

モーツァルトもベートーヴェンも、今の我が家の車内では出番がない。

そして、我が家の車内では、私以外の家族が大音量で熱唱している。

車内全体がライブ会場になる。

私は客席……というか、同乗者席である。

大学オーケストラ出身の夫婦が作り上げた音楽一家の現在が、これである。

ふと気づいた。

我が家の車内で流れている音楽を外から聞いたら、どんな感じなのだろう。

交差点で信号待ちをしている車。

隣に停まった車から、ヤンチャな車から漏れてくる、あの

「ドゥン、ドゥン、ドゥドゥン!」

と、低音が響いてくる。

そして、運転席や助手席からは家族の熱唱が聞こえてくる。

「うっせぇうっせぇうっせぇわ!」

「倍 fight 倍倍 fight 倍倍倍 fight! (fight!)」

「どういた~しまして ユア・ウェルカム!」

そして、車椅子マークが貼ってある。

……。

あ、優しく道を譲ってくれた方。ありがとうございます。どういう心境だったでしょうか。


クラシック音楽が流れる落ち着いた空間から、ずいぶん変わったものだ。

でも、考えてみれば、音楽が好きなことは変わっていない。

ただ、聴く曲が変わった。

一緒に聴く人が増えた。

そして、車内の音量が上がった。

昔は第9の“歓喜の歌”を聴いていた私たちが、今では子どもたちの“たちまち独壇場~唱タイム~”を聴いている。

これはこれで、なかなか贅沢な時間なのかもしれない。

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