食事。
毎日当たり前のように繰り返していることですが、ALSによって身体が動かしにくくなると、この当たり前が少しずつ難しくなってきます。
最初はお箸がうまく使えなくなる。
次に、腕が上がらなくなる。
そして、手が震えて、お箸やスプーンを自分で持つことさえ難しくなる。
食べるという行為は、思っていた以上にたくさんの身体の動きを必要としているんですよね。
でも、身体が思うように動かなくなったからといって、すぐにすべてを諦める必要はありません。
私の場合、身体の状態に合わせて自助具を取り入れることで、できるだけ自分で食事をする生活を続けてきました。
今回は、実際に私が使ってきた食事の自助具を、身体の状態が変化した順に3つ紹介します。
※これは私自身の使用経験です。ALSの症状の進行や、使いやすい道具には個人差があります。
第1段階:普通のお箸がうまく使えなくなった頃
「箸ぞうくん」

最初にお世話になったのが、箸ぞうくん(公式サイト)です。
普通のお箸がうまく使えなくなってきた頃、食事を助けてくれた頼もしい相棒でした。
普通のお箸って、考えてみると結構難しいんですよね。
2本の箸を別々に動かし、先端をうまく合わせ、食べ物をつまむ。
普段は何も考えずにやっていますが、手や指の動きが思うようにならなくなると、これがなかなか難しい。
そこで登場したのが、箸ぞうくん。
一般的なお箸とは違い、グリップ部分を持って、トングのように挟む・離すという動きで食べ物をつまむことができます。
私にとって特に便利だったのは、普通のお箸のような握り方にこだわらずに使えたこと。
まだ指を動かして物を挟む力が残っていれば、その動きを生かして食事ができました。
お箸を自在に操るのは難しくても、挟んで離すことならできる。
できる動きをうまく利用してくれる道具です。
これが本当にありがたかった。
しかも、かなり重宝したので、自宅用、職場用、外食用と、使う場所ごとに分けて購入したほどです。
それくらい、私の食生活を支えてくれた存在でした。
第2段階:お箸は使える。でも腕が上がらない!
アームサポート「MOMO」

次に活躍してくれたのが、アームサポートMOMO(公式サイト)です。
箸ぞうくんのおかげで、食べ物をつまむことはできる。
しかし、今度は別の問題が出てきました。
つまめても、口まで運べない。
そう、腕が上がらないのです。
食事をするには、指先だけでなく、腕を持ち上げる力も必要です。
指先はまだ働いてくれるのに、腕がその仕事をさせてくれない。
せっかく箸ぞうくんで食べ物をつまんでも、口まで運べなければ食べられません。
そこで、箸ぞうくんと組み合わせて使うようになったのがMOMOでした。
MOMOは、腕の重さを支え、腕を動かす動作をサポートしてくれるアームサポートです。
腕の重さを軽減しながら、残っている自分の動きを使って食事をする。
つまり、箸ぞうくんが「食べ物をつまむ」ことを助けてくれる道具なら、MOMOは「腕を動かす」ことを助けてくれる道具。
この2つを組み合わせることで、自分で食べるために必要な動きを補うことができました。
MOMOの良かったところと、ちょっと困ったところ
MOMOは調整できる箇所が多く、自分の身体や使う環境に合わせて調整できるところが特徴です。
ただ、調整箇所が多いということは、それだけ自分に合う状態に設定する必要があるということでもあります。
また、机に取り付けて使用する場合、常に取り付けたままにしておくと場所を取ります。
食事以外の時間も机の上に張り出しているので、邪魔になったり、何かが引っかかったりすることもあります。
使いやすい道具だからこそ、設置場所や取り付け方には気を配る必要がありました。
補装具費支給制度を利用できた
MOMOを導入する際には、補装具費支給制度を利用することができました。
福祉用具は、生活を助けてくれる大切な道具ですが、決して安い買い物ではありません。
制度を利用できたことは、私にとって大きな助けになりました。
利用できるかどうかは、身体の状態や必要な用具、自治体での手続きなどによって異なります。導入を検討する際は、お住まいの自治体の障害福祉窓口やメーカーに相談してみることをおすすめします。
食事だけじゃない! 指揮でも活躍しているMOMO
動画を見てもらえれば分かりますが、実は、MOMOは食事のときだけでなく、指揮をするときにも使っています。
腕が上がりにくくなると、食事だけでなく、腕を使うさまざまな動作が難しくなります。
指揮もその一つ。腕を上げたり、動かしたりする必要があります。
そんなときにも、腕の重さを支えて動きをサポートしてくれるMOMOが活躍しています。
HPにもあるように、使い方は人それぞれ。MOMOは、単に食事を助けてくれる道具ではなく、身体の動きを補いながら、自分のやりたいことを続けるための道具でもあるのです。
ALSによって難しくなる動作は、食事だけではありません。
だからこそ、一つの用途に限らず、自分の残っている動きを生かせる場面で活用できるのは、大きなメリットだと感じています。
第3段階:お箸もスプーンも、自分で持つのが難しい
食事介助ロボット「Obi(オビー)」

そして、さらに身体の状態が変わり、手の震えなどによって、お箸やスプーンを自分で持つことが難しくなってきました。
ここで登場したのが、食事介助ロボットのObi(オビー/公式サイト)です。
Obiは、スイッチ操作で食べたい料理を選ぶと、ロボットのアームがスプーンで料理をすくい、口元まで運んでくれる機械です。
食べ物を自分でつまむことも、腕を持ち上げることも難しくなった私にとって、新しい選択肢になりました。
自分のペースで食べられる。それが本当にうれしい
Obiを使って特にうれしかったのは、自分のペースで食事ができること。
食事は、ただ栄養を摂取するだけの時間ではありません。
おいしいものを食べる楽しみがある。
家族と一緒に食卓を囲む時間がある。
そして、自分のタイミングで一口食べるという、ごく当たり前のことがあります。
身体が動かなくなっても、この「自分のペースで食べる」ということは、私にとって大切なことでした。
自分で食べるために必要な動きを、機械が助けてくれる。
それによって、自分の意思で食事を進められる。
これは、実際に使ってみて感じた大きなメリットです。
ただし、食べ物にも工夫が必要
もちろん、Obiさえあれば、どんな料理でも何も考えずに食べられる、というわけではありません。
料理の形状によっては、スプーンですくいやすいように、あらかじめ小さく切るなどの工夫が必要になります。
機械に合わせて、食べ物の準備にもひと工夫。
料理によっては、食べやすい形にすることを考えなければなりません。
「ロボットが全部やってくれるから、あとは食べるだけ!」
……と、そこまで都合よくはいかないようです。
大きな壁は、やっぱり費用
Obiを導入するうえで、大きな壁になったのが費用です。
私が導入を検討した時点では、補装具費支給制度の対象として利用することができず、費用面の負担が大きな問題でした。
身体の状態に合った道具が見つかっても、価格が高ければ簡単には導入できません。
必要としている人にとって、こうした機器をどうすれば使いやすくなるのか。
技術が進歩して便利な機械が登場しても、費用の問題で手が届かなければ、選択肢が広がったとは言い切れません。この辺はメーカーと国に頑張って欲しいところです。
なお、公的制度や自治体独自の助成は変更されることもあるため、現在の対象状況については、メーカーや自治体に確認する必要があります。
3つの自助具を使ってきて思うこと
今回紹介した3つの道具を振り返ると、それぞれが違う段階の困りごとを助けてくれました。
- 箸ぞうくん: お箸で食べ物をつまむ動きを助けてくれる。
- MOMO: 腕の重さを支え、口元まで運ぶ動きを助けてくれる。
- Obi: 食べ物をすくい、口元まで運ぶ動作を機械が助けてくれる。
身体の状態が変われば、必要なサポートも変わります。
以前は便利だった道具も、身体の動きが変われば使いづらくなることがあります。
反対に、今の自分に合った道具を見つけることで、まだ自分でできることを生かせる場合もあります。
私の場合、こうした道具は、単に食事を便利にしてくれるものではありませんでした。
できるだけ自分で食べたい。
自分のペースで食事を楽しみたい。
その気持ちを支えてくれる存在でした。
もちろん、自助具を使えば何でも解決するわけではありません。費用や設置場所、準備の手間など、それぞれに課題もあります。
また、手や腕の動きだけでなく、飲み込む機能の状態によっても、安全に食事をするために必要な配慮は変わります。食べにくさや飲み込みに不安がある場合は、主治医や言語聴覚士などの専門職にも相談しながら、自分に合う方法を考えることが大切です。
それでも、困ったときに道具の力を借りることで、できることが増えるかもしれない。
私自身の経験が、同じように食事で困っている方や、そのご家族にとって、少しでも参考になればうれしいです。
食べることは、毎日の楽しみ。
これからも、自分に合った方法を探しながら、できるだけ自分らしい食事の時間を大切にしていきたいと思います。


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